西女満別駅の歴史

更新日:2023年07月25日

西女満別駅は、女満別空港の南西に直線距離で約800メートルの場所にある小さな無人駅です。女満別駅と同様、旧網走本線(後の旧池北線、旧ふるさと銀河線)の駅として開設され、1961年以降は石北本線の駅となっています。

現在の西女満別駅について説明をしているイラスト
西女満別駅ホームについて説明をしているイラスト

西女満別駅ができるまで

西女満別駅ができる前は、この近隣に住んでいた人たちは、すぐ近くを線路が通っているにもかかわらず、遠く離れた女満別駅を利用せざるを得ませんでした。当時は自動車があまり普及していなかった時代で、鉄道は貴重な交通手段でした。特に冬季間は積雪のため女満別駅まで行くことが困難となるので、地元の高校生は冬季間は休学せざるを得ませんでした。


このため、1946年10月10日、関係住民22名の連名により「よしの駅設置請願書」が国鉄北見管理部に対し提出されました。「よしの駅」という駅名は、当時この地域が「よしの(芳野)」と呼ばれていたことに由来します。

よしの駅設置請願書

『よしの丁場』は女満別駅から約四粁三分美幌駅へ約七粁七分の位置に在つてここに停車場が設置された場合これを利用するものは美幌町の一部を加へ凡そ五〇〇戸(約三〇〇〇人)でこれ等は皆農業者であつてその經營する耕地面積は田畑を合せて約三千町歩を算しなほ本村に所在の元海軍用地が近く解放される見込であるのでこれが實現の曉にはこの停車場を利用するものが数十戸増加する見込であります

このような状況からみてここに『よしの停車場』の設置は當に関係地方民の幸福であるばかりでなく刻下緊急の要務である食糧増産上は素より其の他民生の福利増進上に資益すること極めて大なるものがありますので関係住民多年の翹望を代表してお願ひする次第であります
昭和二十一年十月十日
(以下22名の署名)

脚注
用語 意味
四粁三分 4.3キロメートル
凡そ およそ
經營 経営
三千町歩 約3000ヘクタール(1町歩は約0.991736ヘクタール)
實現の暁 実現したとき
當に まさに

翹望(ぎょうぼう)

首を長くして待ち望むこと

 

よしの駅設置請願書について説明をしているイラスト

この請願の結果、乗降場が開設されることとなりました。当初は現在の場所より約80メートル北側に建設する予定で、地域の人たちが無償で駅舎の建設工事に取り掛かりました。しかし、ここは湿地帯のため、何度湿地を埋め立てても翌日には沈んでしまうありさまでした。このため、現在の場所に駅を建設する計画に変更されました。

 

こうして、1947年2月11日に旭野仮乗降場(西女満別駅の前身)が開設されました。ただし、戦後間もない時期で建築資材の確保が困難だったため、開業時には駅舎は未完成でした。開業後も地域の人たちが資材を集めては駅舎の建築作業を継続し、1949年ころには小さな駅舎がようやく完成しました。

開業後の西女満別駅

1950年には乗降場から駅へ昇格し、西女満別駅と名称が変わりました。翌1951年には貨物ホームも新設されましたが、この貨物ホームは湿地帯で地盤沈下がひどかったため、3年ほどで使用されなくなりました。それでも貨物の取り扱いはその後も続けられ、農作物の出荷も盛んに行われました。かつては駅のそばに貨物倉庫がありました。


駅ができたことで、それまで冬季間は休学していた高校生が通年で自宅から通学できるようになり、また女満別市街地への買い物や通院も非常に楽になりました。1955年頃には3人の駅員が勤務し、1日平均50人以上の駅利用があり、駅前には商店4件・精米所1件・豆腐店1件がありました。

昔の西女満別駅について説明をしているイラスト
西女満別駅前の商店街があった場所について説明をしているイラスト
西女満別駅旧道について説明をしているイラスト

しかし、自動車の普及が進むにつれ駅の利用は減少していき、駅を訪れる人も少なくなりました。1983年には貨物の取り扱いが廃止されるとともに、無人駅となりました。かつて駅前にあった商店も、現在は全て姿を消しています。現在の一日の平均乗降客数は5人前後で、近隣に住む高校生の通学利用が大半を占めています。

西女満別駅の沿革

昭和22年

(1947年)

2月11日

網走線の旭野仮乗降場として開業

昭和25年

(1950年)

1月15日

乗降場から駅に昇格し、西女満別駅と名称変更

昭和26年

(1951年)

 

貨物ホーム新設

昭和38年

(1963年)

4月1日

業務委託駅となる

昭和58年

(1983年)

1月10日

貨物取扱廃止、無人駅となる

平成17年

(2005年)

10月3日

デュアル・モード・ビークル(DMV)実証実験実施

 

西女満別駅と女満別空港とのアクセス

女満別空港に近い場所にある駅にもかかわらず利用者が少ないことを疑問に感じるかもしれません。

実は、西女満別駅は女満別空港から線路を挟んだ反対側に位置しているため、女満別空港へのアクセスには大きく迂回した片道約2キロメートルの道路を通行する必要があります。しかも、西女満別駅には連絡バスが接続しておらず、携帯電話でタクシーを呼んでも配車に時間を要するので、基本的には徒歩で移動する必要があります。このため、空港アクセスには適さない駅なのです。

そもそも女満別空港が現在地に移転したのは1985年であり、西女満別駅はその約40年前に開業しています。つまり、西女満別駅は偶然に女満別空港と近い場所になっただけなのです。

 

女満別空港に近い位置へ駅を移設させてはどうかという意見もあります。しかし、現状では空港連絡バスの利用者もそれほど多くないため、駅の利便性を向上させても大幅な利用増は望めません。このため、費用対効果の点から、実現は困難です。

また、女満別空港とのアクセスを向上させるため、2005年10月3日にはデュアル・モード・ビークル(DMV)と呼ばれる、線路と道路の両方を走行できるバス型車両を導入する実験が行われました。しかし、DMVの導入には課題が多く、実用化には至りませんでした。

DMVについて説明をしているイラスト

秘境駅としての西女満別駅

しかし、近年は「空港から歩いて行ける秘境駅」として一部の鉄道ファンの方たちから注目されています。

秘境駅とは、人里離れた場所にあり利用者が少ない駅のことです。通常、秘境駅と呼ばれる駅は訪問するだけでも困難な場所にあることが多いのですが、西女満別駅は空港から徒歩約20分の場所にありながら人里離れて利用者が少ないという、非常に珍しい秘境駅なのです。日本でも屈指のアクセス性の良い秘境駅だと言ってもよいでしょう。

また、秘境駅と呼ばれる駅は荒廃していて近寄りにくい場合もありますが、西女満別駅は駅施設がきちんと維持管理されており、冬季間も除雪されています。このため、秘境駅入門としてもおすすめです。

西女満別駅と女満別空港の位置関係について説明をしているイラスト
冬の西女満別駅について説明をしているイラスト

西女満別駅は周囲を森に囲まれているため、人工物があまり視界に入ってきません。また、停車する列車も少なく、利用者もほとんどおらず、幹線道路からも離れているため、普段の西女満別駅は非常に静かです。木々に囲まれ、風の音や鳥の声に包まれていると、まるで森林浴をしているような癒しの気分を味わえます。

また、西女満別駅は急な坂の下にあるため、西女満別駅から女満別空港を直接見ることはできません。このため、ときどき聞こえる飛行機のエンジン音が無ければ、わずか約800メートル先に女満別空港があることを忘れてしまいそうです。

駅から少し足を延ばすと広大な畑が広がっており、観光地化されていない本来の北海道らしい農村風景を味わうことができます。

西女満別駅待合室について説明をしているイラスト
西女満別駅のおもいでノートについて説明をしているイラスト
西女満別駅周辺について説明をしているイラスト

なお、西女満別駅の前には数台分の駐車スペースがありますので、自動車で駅を訪れることもできます。また、携帯電話は問題なくつながります。ただし、西女満別駅にはトイレと自販機が無いため、訪問前にトイレ利用を済ませておき、あらかじめ飲み物を用意しておくことをおすすめします。

時間に余裕のある方は、ぜひ西女満別駅へ足を運んでみてください。

西女満別駅でヒグマが出没するかについて説明をしている4コマイラスト

西女満別駅へのアクセス

女満別空港から西女満別駅への道順について説明をしている8コママンガ
女満別空港から西女満別駅までの地図

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