女満別湿生植物群落

更新日:2023年09月26日

 女満別湿生植物群落は、JR石北本線女満別駅から呼人駅までの間の網走湖畔の低湿地に約2キロメートルにわたって帯状に広がる、ヤチダモやハンノキ、ミズバショウなどが生育する湿生林を中心とする植物群落です。
 ほぼ手つかずの状態で残された北海道の低湿地林として学術上価値が高いものであり、昭和47年(1972年)6月14日に国の天然記念物に指定されています。

湿生植物群落内で一面に花を咲かせたミズバショウの様子の写真について説明をしているイラスト
湿地に生えるハルニレやヤチダモなどの広葉樹林の写真について説明をしているイラスト

 この群落の保護に情熱を注ぎ、天然記念物指定の後押しをしたのが、北海道大学農学部の舘脇操教授です。
 舘脇教授は、この群落の保護のため、以下のような多大な努力をされています。

天然記念物指定への経緯

年月日

事項

昭和29年

1954年

舘脇教授が、湿生林を管理する国鉄・営林局に調査をもちかけ、北見営林局から委嘱を受けて群落の調査を実施。

昭和36年

1961年

舘脇教授が、北見営林局から論文「日本湿生植物図譜(4)オホーツク沿岸の落葉広葉樹林植生」を発表。

昭和41年

1966年

文部省による天然記念物指定域の候補地調査が実施される。

昭和42年

1967年

舘脇教授が、北海道大学農学部邦文紀要に論文を発表する。

昭和47年

1972年

舘脇教授が、北海道大学農学部の田川隆教授(北海道文化財専門委員であり、天然記念物の推薦が可能な立場)に報告書を渡し、天然記念物指定を託す。
その後、田川経教授が天然記念物指定を後押しする意見を発表。

昭和47年

1972年
6月14日

女満別湿生植物群落が国指定天然記念物となる。
湿地に花を咲かせるミズバショウと舘脇操博士の肖像及びプロフィールが記された写真について説明をしているイラスト

 手つかずの自然が残されていることもあり、群落内には多くの貴重な動植物が生息しています。
 群落内には林道が通っており、貴重な自然を道路から眺めることができます。
 なお、自然環境保護および外来種持ち込み防止のため、道路から外れて群落内に立ち入ることは厳に慎んでください。

湿地に生育し植物群落を構成する多くの植物をまとめて載せた写真について説明をしているイラスト
湿性植物群落に生息する多くの動物・鳥類をまとめて載せた写真について説明をしているイラスト
女満別湖畔で営巣するアオサギの写真について説明しているイラスト
群落内を通る林道の写真について説明しているイラスト

女満別湿生植物群落の現状と課題

現状

 近年、湿生植物群落内の樹木の倒木が目立ち、その後、後継樹が見られず、樹木の更新がうまく進んでいない箇所が見受けられます。そこにヨシ原が拡大しており、群落内の構造や植生に変化が見られ、ギャップ(森林の中の隙間)が拡大しています。
 また、ミズバショウが一部ヨシの繁茂により減少しています。

南ヨシ原の航空写真について説明をしているイラスト
南ヨシ原の地上の様子について説明をしているイラスト

考えられる原因

 内陸側から湧水が浸入しているとみられますが、この浸入水の排出が十分機能しておらず、群落内の地下水位が上昇しています。これが植生悪化の原因ではないかと考えられています。
 湿生植物群落と網走湖の間を通る林道(林道湖畔観光線)が遮水壁となり、網走湖側への排水を妨げていることが地下水位上昇の原因と考えられます。
湿生植物群落の植生悪化の原因について説明をしているイラスト

今後の対策

 詰まって機能しなくなった排水管を2015年に清掃したところ、清掃した管の周辺で地下水位の改善が見られました。このため、林道の下に排水管を新たに埋設し浸入水の排水を促進することが、地下水位を改善し植生を回復させるためには有効であると考えられます。
 しかし、適切な位置に適切な方法で排水管を設置しないと、更なる植生悪化を招く危険性もあります。このため、大学教授4名を委員とする女満別湿生植物群落保全対策検討委員会を定期的に開催し、今後とるべき対策について学術的見地から慎重に検討を進めています。
 また、今後とるべき対策の基礎資料とするため、水位計による地下水位の測定を継続しています。

2015年に実施した排水管清掃の様子について説明をしているイラスト
湿生植物群落の水位計設置状況について説明をしているイラスト

女満別湿生植物群落の位置

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