大空町の新しい高校づくり

更新日:2023年03月31日

新しい高校づくりにおける現状と背景

 大空町には、町立の東藻琴高校と道立の女満別高校があります。
 女満別高校は昭和26年に「北海道美幌高等学校女満別分校農業科」として、東藻琴高校は昭和28年に「北海道美幌高等学校東藻琴分校農業科」として設置認可を受けて開校し、これまで農業後継者を養成し、卒業生の多くは本町の農業従事者となっています。
 その後、女満別高校は道立の普通科高校として、東藻琴高校は町立の農業科高校として、地域に根差した教育の実践によって、多くの町民から愛される高校となっています。
 しかしながら、町内をはじめとした近隣市町の中学卒業者数の減少により、両校への入学者数は年々減少し、ここ数年は定員を割る状況が続いています。

オホーツク東学区の中学生と高校生の推移のグラフ
東藻琴高校と女満別高校の入学者数の推移 (人)
項目 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度 平成29年度

東藻琴高校入学者数

28 31 20 23 22 14

うち町内中学からの入学

4 2 3 7 3 2
女満別高校入学者数 40 58 25 13 28 16
うち町内中学からの入学 17 26 13 8 11 9

大空町の高等学校教育を考える協議会の設置

 こうした現状から、大空町の大空町の未来を担う人材育成及び高等学校教育に関して充実した教育環境を確保するため、「大空町の高等学校教育を考える協議会」を設置し、平成18年度から協議を行ってきました。

構成員一覧
項目 構成員

委員

町内中学校PTA・町内高校PTA・町内高校同窓会・女満別高校振興協議会・教育委員会

顧問

議会議長・議会産業建設文教常任委員長・教育委員会委員長

オブザーバー

助言者

町内中学校長・町内高等学校長・オホーツク教育局

 「大空町の高等学校教育を考える協議会」では、両校関係者による意見交流を重ね、それぞれの高校の存続・要望活動を展開してきましたが、生徒数の減少や中学生の多様な進路希望の現状を踏まえ、2つの高校の統合に向けた協議を開始し、方針を定めて町民の皆様からの意見を募りました。

主な協議内容一覧
年度 主な協議内容 協議期間
平成18年度
  • 協議会設立
  • 両高校の紹介
  • 意見交換

意見交流期間

平成19年度 公立高校出願状況と今後の対応 意見交流期間
平成23年度 間口確保対策検討

存続・要望の活動期間

平成24年度 女満別高校2間口要望活動 存続・要望の活動期間
平成26年度 町内中学卒業者と町内高校入学状況の確認 存続・要望の活動期間
平成27年度
  • 公立高等学校配置計画の検証
  • 中学生及び保護者へのアンケート調査
  • 新しい高校づくり素案協議開始
  • 広報誌で内容周知(意見公募)
  • ふれあいトークで内容周知

発展的に1校に統合する考えとする

  • 統合へ向けた協議の開始
  • 町民周知・意見公募期間
平成28年度
  • 高校の形態の検討
    町立の全日制の考えとする
  • 学科の検討
    総合学科、コミュニティスクール、平成32年開校の考えとする
  • 広報誌で内容周知(意見公募)
    町民説明会(11月) 意見聞き取り
  • ふれあいトークで内容周知、意見聞き取り
  • 町民の意見を踏まえた論点整理と最終協議(7つの方針)
  • 方針協議
  • 町民周知・意見公募期間

平成27年度町内中学生及び保護者に対するアンケート調査

 新しい高校づくりにあたり、「大空町の高等学校教育を考える協議会」では、町内の中学生及び保護者を対象にアンケート調査を実施しました。

アンケート調査の実施状況

  • 実施年月日: 平成27年7月13日から7月23日まで
  • 対象者 : 大空町内の中学生及び保護者
  • 配布数 : 全体 434部
    • 中学生 217部 (女満別中学校 145部 東藻琴中学校 72部)
    • 保護者 217部 (女満別中学校 145部 東藻琴中学校 72部)
  • 回収数 : 352件 (回収率 81.1%)

アンケート結果

平成28年町民説明会に寄せられた意見の内容

 平成28年11月に実施した町民説明会や12月から2月にかけて例年実施しているふれあいトークにおいて、町民の皆様から様々な意見が寄せられました。

11月に実施した町民説明会の開催状況 (参加者合計 76名)
開催日 地区 会場 参加人数
平成28年11月24日 東藻琴地区 西倉自治会館 5人
東藻琴地区 末広自治会館 12人
東藻琴地区 農村環境センター 30人
平成28年11月25日 女満別地区 大成公民館 7人
女満別地区 旧豊住小学校 6人
女満別地区 役場庁舎議事堂文化ホール 16人

 12月から2月にかけて例年実施しているふれあいトークでも新しい高校づくりの内容の説明をしました。
町内23会場 522人の参加者

町民から寄せられた意見の内容
会場等 意見の内容
町民説明会
  • 2つの校舎について
  • 総合学科について
  • 財政負担の増加について
  • 生徒確保について
  • 東藻琴高校を存続すべき
  • 教員体制について
  • 全日制と定時制について
  • 高校の偏差値について
  • 公立高校配置計画について
ふれあいトーク
  • 町の財政への影響について
  • 2つの校舎について
  • 総合学科について
  • 生徒確保について
  • 道立で存続すべき
  • 公立高校配置計画について
  • 存続は断念すべき
個人からの意見
  • 賛成する意見
  • 反対の意見
  • 他の町民の関心度は?
  • 地元からの進学率は?
  • 統合しても生徒が来ないのでは?
  • 経済的理由から残してほしい!

町民の意見を踏まえた「大空町の高等学校教育を考える協議会」の協議結果

 「大空町の高等学校教育を考える協議会」では、様々な立場から寄せられた町民意見の論点整理を行い、特に意見が多く教育の内容や教育環境に関与するもの、教育の質に大きな影響を及ぼすと思われるものについて重点的に協議を行いました。

「大空町の高等学校教育を考える協議会」における重点協議結果
重点協議事項 意見の内容
総合学科について

学科の内容と町民アンケート(中学生・保護者)を検証し、両校の素晴らしさが継承でき個性に応じて将来を選択できる総合学科が相応しいと考えます。
また、教職員による進路指導が充実しており、一人一人に行き届いた教育ができることも最大の利点です。

2つの校舎について

教育の本質から議論し、学校のコンセプトたる学科を「総合学科」とした中で教室数の不足から両校舎を使用する結論に至ったものです。
また、両地区の地域性を学ぶ機会ができ、生徒が地域を好きになることは先駆的な取組として考えることもできます。

教員体制について

法律に準じて教職員の定数を定めることになっているため、教育水準は確保され、さらに総合学科は、学科や単位数で教職員が加算される仕組みになっています。
また、町立であることから独自に定数を定めることが可能なため十分な教職員数を確保できると見込んでいます。

高校存続の可否について

高等学校教育は「社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させる」ことを目標としており、高校が地域とともにある教育を展開することで、地域に支えられた生徒たちが、地元に就職したり、進学して見聞を広め、大空町の担い手になることは十分期待できると考えています。

町民の意見を踏まえた「大空町の高等学校教育を考える協議会」が導き出した7つの方針

町民から寄せられた意見を踏まえ、「大空町の高等学校教育を考える協議会」では改めて協議を行い、次の7つの方針を導き出しました。

  1. 少子化による社会的背景に伴い、両校の発展的統合を図る
  2. 大空町の教育方針を反映させるために、町立の高校とする
  3. 大空町に相応しい高等学校教育を実践するため、全日制の総合学科とする
  4. 新しい高校は「地域とともにある高校」としてコミュニティ・スクールとする
  5. 教育水準の維持向上のため、教職員数の適正な配置を図る
  6. 生徒や教職員の負担を十分考慮したうえで、両校舎の有効活用を図る
  7. 平成(32)年の開校を目途に、北海道教育委員会との連携を図る

平成32年の開校は以後の協議で平成33年に変更しています

平成29年3月における大空町の新しい高校づくりにおける町民説明会の開催

 大空町の新しい高校づくりにおける町民説明会を次のとおり開催しました。
 町民説明会では、これまで「大空町の高等学校教育を考える協議会」が協議を行ってきた経過や中学卒業者数の減少状況、町内高校への地元進学率等について説明しました。

町民説明会の開催一覧
開催日 会場 参加人数
平成29年3月21日 女満別研修会館 38人
平成29年3月22日 東藻琴農村環境改善センター 64人

 また、町民説明会では、新しい高校のあるべき姿やコンセプトについて説明しました。大空町の人口ピラミッドで将来的な担い手不足の状況を確認し、町の課題を解決できる人材を育成する内容を示しました。

大空町の高校づくりのコンセプトのフロー図

平成29年3月の町民説明会の結果

 平成29年3月に開催した町民説明会において、女満別会場では反対の意見はありませんでしたが、東藻琴会場から「東藻琴高校を現状のまま存続すべき」とする意見が出されました。
 当初、教育委員会は「7つの方針」に対する町民の理解を得た上で、平成29年4月から具体的な協議を開始する予定でしたが、「2つの校舎の活用によって将来的に東藻琴から高校がなくなるのではないか?」「小規模校の総合学科は機能せず、現状の農業高校のまま特色を出すべき」 との意見が出され、「方針レベルであっても納得がいかない」とする意見が出されました。
 教育委員会は、それぞれの会場で異なる結果となった状況に、拙速に進めるべきではないと考え、反対の方と「話し合いの場」を設けることにしました。その後、東藻琴地区において「東藻琴高校を存続させる会」が発足されたため、「存続させる会」と話し合いを行うことにしたところです。

教育委員会による検証について

 その後、「東藻琴高校を存続させる会」から「東藻琴高校の存続を願う要請書」が提出されました。
 また、自治会長を対象にした出前説明会においても「多系列の総合学科と2つの校舎の活用方法に課題があるのは明白」と意見が出されました。こうしたことから、現状の課題を整理した上で、先に定めた「7つの方針」の範囲で検証を行うことにしました。

1.現状の課題の把握

 まず、現状の課題を三つとしました。

  • 一つは住民協議で導き出した「7つの方針」とそれに反対する住民からの「東藻琴高校の存続を願う要請書」について、いずれも町民による協議と要請であり、行政として双方ともに重きを置くべきものであることから課題に位置付けたところです。
  • 二つ目は、住民から特に質問や意見の多かった「2つの校舎の活用方法」と「多系列の総合学科」について、住民の不安をどのように解消すべきかという課題です。
  • 三つ目は、これまで開催してきた住民説明会に小中保護者の姿が少ないことから、関心を高めるためにどうすべきかといった課題です。

2.三つの課題の整理

 三つの課題はそれぞれに内容が違うことから「論点整理」「検証」「分析」によって整理しました。

  • 一つ目の課題は、「7つの方針」と「要請書」の共通項と相違点の明確にし「論点整理」を行うことにしました。
  • 二つ目の課題は、2つの校舎で学校運営を行う高校と町立の総合学科の高校を視察し、本町に照らし合わせた「検証」を行いました。
  • 三つ目の課題は、過去の中学生アンケート結果や町内中学生の進路状況を確認し、生徒や保護者のニーズを「分析」することにしました。

3.考察と新ビジョンの作成

 三つの課題を整理し問題点を改めた上で、さらに新しい高校の魅力を高めるための専門機関との調整もしながら、考察を加え「新ビジョン」を作成しました。

考察と新ビジョンの作成フロー図

7つの方針に加えた「新ビジョン」について

 「新ビジョン」では、これまで4系列を想定していた総合学科を2系列に絞り、校舎の活用方法についても踏み込んだ内容を示しました。
 問題点を改めた上で、大空町と包括連携協定を締結している東京農大との連携を視野に入れた中で、全国的に実績のある「高校魅力化プロジェクト」による公設塾の導入を検討することにしました。
 新しい高校において、探究型の学習と実践によって「地域活性化に貢献できる人材を育成する教育」を展開し、「大空町の担い手を育成する」学校のコンセプトを町民の皆様に示したところです。

新しい高校づくり「新ビジョン」のフロー図
大空町の新しい高校 総合学科の説明図

「新ビジョン」に対する小中学生保護者アンケート結果について

 教育委員会では、これから高校に通う小中学生の保護者を対象に「新ビジョン」に対する意見を聞くため、さらには新しい高校づくりへの関心を高めてもらうために、アンケートを実施しました。

アンケート調査の実施状況

  • 実施年月日 : 平成29年11月1日から11月10日まで
  • 対象者 : 大空町内の小学生及び中学生の保護者
  • 対象者数 : 602人
  • 回答者数 : 462人 (回収率 76.7%)

アンケート結果(報告書総括から)

  1. 大学や専門学校へ進学するため、町外の高校に通わせたい保護者が多い
  2. 「将来の生き方や進路についての学び」に対する関心が高い
  3. 地元からの進学率向上の可能性について
     新ビジョンへの入学希望者は7%と少数でしたが、75%の保護者はわからないと答えています。その中でも36%の保護者は「わからないが関心はある」と答えており、入学を希望している保護者と合わせると43%の保護者が関心を示していることがわかりました。
     これまで教育委員会では、過去の説明会の参加者数から「保護者の関心は低い」と思っていましたが、「もう少し情報がほしい」「地元にいい高校があれば」との意見が寄せられており、「子どもにあった高校なら通わせたい」とした保護者の意向が伺えました。
  4. 「大空町にふさわしい高校」と思った方が半数を占めている結果について
     新ビジョンの高校が、大空町にふさわしい(どちらかと言えばふさわしいを含む)と答えた保護者が50%を占め、一方でふさわしくない(あまりふさわしくないを含む)と答えた方は少数の11%になりました。この設問は、子どもに関せず保護者自身の視点から回答を求めているため、新しい高校のビジョンに据えた「地域の人材育成」や「基幹産業を基軸にした教育」などに、まちづくりの視点から多くの方が一定の理解を示したものと思われます。

「7の方針」+「新ビジョン」に対する説明会及びふれあいトークの意見について

 平成29年12月に「保護者説明会」及び「町民説明会」を開催し、さらには平成29年12月から平成30年2月にかけて「ふれあいトーク」を実施して多くの町民から「7つの方針」+「新ビジョン」に対する意見をいただきました。

保護者説明会の意見

  • 東藻琴地区:平成29年12月6日 東藻琴老人福祉センター(フロックス)
  • 女満別地区:平成29年12月8日 大空町役場1階1号会議室

 保護者説明会では、総合学科におけるカリキュラム改革において、一定の大学への進学を可能としたことや探究型の教育内容としていること、「高校魅力化プロジェクト」による公設塾の設置など、学力向上に対応した内容に好意的な意見が寄せられています。
 また、女満別地区と東藻琴地区による意見の相違は見られず、「もう早く進めてほしい」との要望が多く出されています。

保護者説明会の意見一覧
会場 「7つの方針」+「新ビジョン」への主な意見

東藻琴地区
12月6日

このビジョンであれば、いいと思う。保護者アンケート結果も含め他の保護者にも見てもらいたい。もっとPRすべき。
子どもに通わせたいと思わせることが大切で、子ども向けのわかりやすいパンフレットを作ってみてはどうか

女満別地区
12月8日

子どもの希望を尊重したい気持ちもあるが、子どももどこまで将来のことを考えているか疑問なので、今回の説明のようにこれからの教育が変わる点を強調して、保護者にも危機感を持ってもらうといいと思う。

新ビジョンは魅力的なので、先送りせず進めてほしい
上の子は中学生なので、開校時期が33年だと間に合わず本当に残念。下の小学生は入学できるように、早く進めてほしい

これまで反対意見ばかりクローズアップされていたが、新ビジョンは魅力的でありアンケートにも結果が出ている。
少しでも早く開校するためにも、現在の方針協議を次の準備協議に進めるべきだと思う

町民説明会の意見

  • 女満別地区:平成29年12月13日 女満別研修会館大会議室
  • 東藻琴地区:平成29年12月14日 東藻琴農村環境改善センター2階

 町民説明会では、女満別地区から「このまま進めてほしい」とする意見が出されている一方で、東藻琴地区からは、ビジョンに対する質問が多い結果となっています。
 両地区において共通した肯定的な意見は、新しい高校と東京農業大学の連携であり、全体的に平成29年3月の町民説明会の時のような強い反対意見はありませんでした。

町民説明会の意見一覧
会場 「7つの方針+「新ビジョン」への主な意見

女満別地区
12月13日

分かりやすい内容となっているので、保護者にも伝わると思う。ぜひこのまま進めてほしい

東藻琴地区
12月14日

女満別地区の方は、どのような反応だったのか?
剣淵高校(町立の総合学科)の視察において、2系列の生徒の割合はどの程度だったのか?
町外にスクールバスを出して、生徒確保に努めるべきだと思う
もっと東京農大との連携を深めて、色々な取り組みをすべきだと思う
地元の子どもたちが通わないのはやむを得ないと思う。それよりももっと全国から生徒を募集すべきではないか?
定時制の方が魅力的ではないのか?
出前説明会を行うのはいいが、説明ばかりではなく、もう結論を出したほうがいいと思う

ふれあいトークの意見

町内各自治会:平成29年12月から平成30年2月

 ふれあいトークにおける町民の意見を総じてみると、概ね肯定的な意見が多く、大きな反論はありません。
 2つの校舎の活用方法に関する質問はありますが、多くは内容を確認するためのもので、質問への説明には一定の理解をいただいております。
 意見の傾向としては、子育ての終わった世代から「東京農大との連携」に好意的な意見が述べられ、子育て世代からは公設塾の設置に強い関心と期待を寄せていただいております。
 また、開校が平成32年から平成33年に事実上先送りになった経過から、「もう早く進めるべきではないか」との意見が増え始め、平成29年3月に比べると町民の論調が大きく変化しています。

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